自分ごとにするワクワクをみんなに。芦澤先生が起業家教育について語りました。

横浜市大の起業家教育をパワフルにリードする芦澤先生が、これまでの取り組みや教育に賭ける想いをプレゼンしました。3月16日、横浜市大がみなとみらいサテライトキャンパスにて記者懇談会を開催。登壇された芦澤先生の発表内容をレポートします。


記者懇談会って?

3月16日に開かれた記者懇談会は、横浜市大が手がけるアントレプレナーシップ教育をテーマに、具体的な教育の特色や授業を受けた学生の生の声が紹介されたイベントです。

当日は芦澤先生のほか、小山内いづ美理事長や中條祐介副学長から教育方針に関する紹介、さらに全国から学生が集うビジネスコンテストで奨励賞を受賞した服部諒さん(横浜市大3年)やStockBaseの関芳美さん、菊原美里さん(ともに横浜市大4年)が登壇されました。

(余談ですが菊原さんは芦澤ゼミの先輩です!偉大や偉大!)


現場で鍛える。外に出る。

産業界での実務経験を経て、2013年に横浜市大に着任された芦澤先生が教育において何より重視している点が、現場で学ぶ機会です。私たち学生をキャンパスの外に出し、窮屈な発想から抜け出せる視点を持たせるため、これまでゼミ活動でも多くの取り組みを講じてきました。

フィリピンのセブ島を訪れ、現地のスラムに住むティーンと一緒に起業体験プログラムを行なったフィールドワークや、(「2019年 海外フィールドワーク in Cebu!〜day5〜」)

地元の企業や行政の方と協働して、テクノロジーや食など多数のワークショップを展開した「Aozora Factory」、(「Aozora Factory2018@海の公園なぎさ広場 ~活動報告~」)

中国の先進的なスタートアップ・エコシステムを調査した上海フィールドワーク

(「2019年 海外フィールドワーク in上海」)

挙げていくと枚挙にいとまがないのですが、入ゼミから半年ほど経った現在2年生の中の人も、日本のイノベーションの中心地「CIC TOKYO」や、先生が社外取締役を務める「NECネッツエスアイ」のオフィスに足を運ばせていただきました。

芦澤先生は、「現場に出て、学生以外の視点から考えること、社会人とガチンコでディスカッションすることが学生の成長を強く後押しする」と話します。


アントレプレナーシップを育む実践授業

日本で起業やスタートアップが進まない問題点を、芦澤先生は学術データを用いて説明します。

日本のGDPは2010年ごろからワニの口が開いたように中国から引き離され、当然アメリカとの差も広がる一方。企業ごとの時価総額を見ても、アメリカのGAFAMや中国のテンセントと比較し、日本のトップ企業は時価総額の桁が違い、さらには創業年数がいやに長いのです。

また、国民の創業行動指数が著しく低いのも日本の特徴で、起業に関する知識能力を問われると調査対象の47カ国中最下位という現状があります。

この問題について芦澤先生は、「大部分が大学の教育に責任がある」と危機感を抱き、そこから、学生が「やったらできる」と思える気持ちを醸成するような、体系立った講義の設計を始めたといいます。

横浜市大に入学した1年生がまず受講する講義が、起業家のマインドセットを学び、育むことを目的とした「企業家に学ぶ」です。この講義では、毎回実際に起業された方がゲストとして登壇し、自身の経験やノウハウを共有する内容となっています。

「企業家に学ぶ」の特徴は、大企業の経営者などスター性あふれる人だけでなく、横浜市大のOBOGであり起業家の方を迎え入れている点でしょう。「社会に出てインパクトを残すことがどれだけエキサイティングで、自分にもできることかを伝えたい」と、芦澤先生は横浜市大卒業生をゲストに呼ぶ理由をこう説明します。

マインドセットの形成に次いで受講するのが、「起業家人材論」や「起業プランニング論」といった実践プログラムです。これら学生主体の講義では、チームでビジネスアイデアを立案し、そのアイデアを事業計画書に落とし込んでビジネスコンテストに参加します。ビジネスコンテスト出場を機に起業に至った受講生もいます。

「学生に機会を与えると、自分ごととしてさまざま考えるようになる」と機会の提供を講義の大きな役割とする芦澤先生。「それが社会的インパクトを与えるし、ひいては地域にまで影響を及ぼせる可能性を秘めているのです。」


街へと拡がるアントレ教育

アントレプレナーシップの獲得は、決して学生だけに求められるものではありません。芦澤先生が展開する起業家教育の範囲は、大学から街へと拡大しています。

2021年には、横浜4大学や企業、行政との連携のもと、「あなたを進化させる学び場」をコンセプトとするYOXOカレッジを立ち上げました。YOXOカレッジは、さまざまな分野の専門家の講座を受講したり、同志や相談し合える仲間との出会いの場を提供するイノベーター育成のプラットフォームです。

岸田文雄首相が2022年を「スタートアップ元年」と位置付けた今日、政府からの支援がスタートアップ・エコシステムに続々と寄せられることは間違いありません。また、横浜、特にみなとみらいにはR&Dや新規事業を抱えた大企業が集積しつつあり、産学官の活発な協働が待ったなしと見られています。

「個別の組織を自由に越境する地域共創が街の発展に重要になってくる」と芦澤先生は話し、イノベーションの素地が整い始めた横浜という街で、アントレプレナーシップの育成やエコシステムの形成に尽力する姿勢を示しました。



芦澤先生は最後にメッセージとして、アントレプレナーシップ分野の世界的権威であるバージニア大学ビジネススクール・サラスバシー教授の言葉を引用し、「アントレプレナーシップとは、ただ起業家を育てるだけでなく生きることそのものです。不確実性が大きい時代の中で、この国をどうしていきたいのか、自分がどうなりたいのか、全ての人に取り組んでいただきたいと思います。私も後ろ姿で見せていきます」と話しました。


おわりに

芦澤先生、特にここ最近はあらゆるイベントに登壇されているようです。今回はそのひとつに腰巾着のごとくついていき、プレゼン内容をレポートしました。

「何を学べるのか」ばかりに注目していたゼミ選考でしたが、その先生がどんな興味や問題意識を抱き、それらを発散するためにこれまで・今・これからいかなる行動を起こしているのかまで吸収できると、私たち学生の学びに対する切り口も格段に増えることが実感できました。読んでいただいた皆様にも、芦澤先生が踏みしめてきた足跡を感じ取っていただけたら幸いです。


(文章:大武)

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