起業体験PJT@セブ2016を振り返って - 芦澤美智子

「ゼミ生を海外に連れていく」


それは、私が4年前に教員になった時からの、もっと言うと、8年前にキャリアチェンジして大学教員を志した時からの夢でした。

なぜなら、私自身が20歳のとき、ゼミ合宿で初めて海外に連れ出してもらった(実は飛行機もこの時が初めて)経験を持つからです。

あの時の、「世界はかくも広く深く、私が知るべき世界、やるべきことはまだまだあるようだ」という、心の底から沸き起こる感覚は、

大学受験を終えてひかれたレールの最終点で途方にくれていた私に、新たなるエネルギーを与えてくれました。

おそらく、私が自分の足で、自分の道を歩き出すきっかけと勇気をくれたのが、あの20歳のときのゼミ合宿でした。

そんな経験を教え子に伝えたい。。。

横浜市立大学には「海外フィールドワーク支援制度」という素晴らしい助成制度があります。

しかしながら、どうせやるなら、私の想いを詰めた、芦澤ゼミにしかできないゼミ合宿にしたい。。。

①普通の学生が普通に参加できる、敷居の低いプログラムとしたい(英語経験も海外経験も問わず、予算的にも負担をぐっと抑える)

②現地メンバーと共同チームを組み、現地市場でガチなビジネス経験するような、そんな実践的プログラムを作りたい

③東南アジアにみんなを連れていきたい。なぜなら、日本企業にとって連携(進出)可能性が高く、社会的課題が多く、そして圧倒的なエネルギーにあふれた場所だから。

そして、2年前に、

「東南アジア」

「治安が比較的良好」

「(実践的プログラム実現のため)ローカルの人々が英語を使っている」

「(予算を押えるため)物価ができるだけ安い」

という条件をクリアする、フィリピンセブ島でゼミ合宿を実施することを決めました。



しかしながら、実はその時、私、セブには知り合いがいませんでした。

細い糸をたぐり寄せ、時にはHP掲載のお問い合わせ先にメールをしたりして、手探りでプログラムを創っていきました。

それはまさに、「ゼロからイチを創る」試行錯誤でした。

数多くのボツとなったミーティング、方向性や条件が合わないとのお断りの言葉をいただきながらも、

起業家精神にあふれる人々との出会いによって、夢は実現することになったのです。

「それなら、セブの日本祭に出たらどうでしょうか」と、2014年から始まったお祭を紹介してくださった、セブポットの佐藤ひろこさん。

「我々のチーム、我々のプログラムと、芦澤ゼミの起業体験プログラムを組み合わせてみたらどうでしょうか」と提案くださった、ワクワークイングリッシュの山田・森住ご夫妻。

「すごく面白い取り組みなので応援します」と、現地のディープな情報を提供しながら伴走してくださる、ライターの庄司里紗さん。

等々。。。


そうして実現した「起業体験プログラム@セブ」

2年目となった今年の、振り返りセッションで嬉しかった言葉の数々の中からいくつかを抜粋します。そこにこのプログラムの醍醐味が見て取れると思うので。


■■偏見や思い込みを乗り越えることから生まれる価値■■

「実は昨年は、フィリピンメンバーを信頼できず、現金は全て日本人が扱っていた。

今年、『真の協働』を掲げていたので、思い切ってキャッシャーのシフトにフィリピンメンバーを入れた。そうしたら、、、日本人より格段に早く、正確な現金の受け渡しだった。

そりゃー、現地の通貨を現地の人が扱う方が早くて正確に決まっていると、今になって気づいた」

■■泣くほどの悔しさから生まれる新しい挑戦意欲■■

「初めての海外(今年は初海外が7名もいました!)で、自分が何もできなくて、悔しくて部屋で1時間も泣いていた。次に来るときはこんな気持ちは嫌なので、英語も勉強したいし、もっと自分が輝く何かをみつけたい。体力も精神力も経験も知識も足らないので、もっと勉強して、自分を鍛えたい」

「最後に泣けるほど全力で取り組んだこと、しかも、国籍や生まれ育った環境の違う人とその想いを共有すること、そんなことができるなんて、大きな自信となった」

■■リーダーシップを取ることの成功体験■■

「これまでリーダーをした時に、影でネガティブなことを言われていたこともあり、人の前に立つのを避けていた。でも、今回のチームは、フィリピン人のエネルギーにも引っ張られ、誰がリーダーシップを取るとか取らないとか、そういうことは関係なくて、それぞれができることをやっていた。全員リーダーシップが実現していた」

「今年は3年生だし、リーダーとかじゃないけれど、できることをやろうと。皿がなくなったときに、『よし、交渉に行くよ!』とお店を回って交渉してお皿を集めてきた。シャイで人の後ろに隠れがちな自分の殻を破れた気がして嬉しかった」

「リーダーをやってみて、大変だったけれど、最後に「あなたがリーダーで良かった」とみんなに言われて、本当に嬉しかった。自分なりの1つのリーダーシップスタイルを見出して、今後の自信につながると思う」


■■(多様性)チームで働くこと■■

「受験勉強は個人プレイだし、人と関わるのは面倒なので、これまでずっと避けてきたけれど、初めてチームで働くことのパワフルさ、楽しさを体感できた気がした」

「フィリピン人の明るさに、モノの見方の違いに、日本人同志の小さな違いが吹っ飛んだ。とても開放的で突き抜けた雰囲気でチームで働くことが楽しかった」

3年目となる来年。。。。

そろそろ、「芦澤ゼミの海外合宿は前提条件のごとくあるもの。過去の方針を無難に踏襲しよう」と思うメンバーが多く出てくることでしょう。

でも、こんな小さなプログラムでも、ゼロからイチになった時期があったことを知って欲しいです。

その小さな芽を、普通の学生や現地フィリピンメンバーが、大事に育てていったことを知って欲しいです。

そして、ゼロから新たなイチを創ることを、これからも追求していきたいと思います。

それが、日本の、世界の未来を創ると思うから。。。

「自分には何もない」なんて勘違いしている普通の学生たちの、個々の大きな可能性が見えると思うから。。。


芦澤 美智子

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